A. 抜歯して治療を行うか、非抜歯で治療を行うか、という、論争は、矯正歯科治療の、黎明期から行われていた。
Angleは、オーストラリアのオーストラリアピテクスの系統を有する、アボリジニーより類推し、非抜歯での治療を提唱したが、その弟子である、Tweedは、骨格の前提に差異があるため(骨格の矮小化が、西洋人に認められる)、抜歯も必要なのでは、という論争であった。
この時点では、機能的顎矯正装置(functional appliance)、顎整形外科的装置(orthopedic appliance)は、あまり考慮に入れられず、単に、各人が持つ顎の大きさをベースにして、抜歯・非抜歯を論じた時期であったと思われる。
この時点では、抜歯する物も有り、抜歯しない物も有るというのが、一般的見解になり、今もその論脈を継承している(Angleのいう、絶対抜歯は認めないという論からの変化)。
B. 第二次大戦中、Bjorgの、側方頭部X線規格写真(距離と撮影角度を一定にした写真と同じです)を利用した、脳頭蓋インプラント(脳頭蓋骨に計測比較の基準点となる指標として、金属鋲を挿入)の研究により、経年的な、顔面骨格の成長傾向(方向、量など)が示された。
この研究結果(比較基準点となりうる、あまり変化しない点と、成長パターン記録)を基に、機能的顎矯正装置(functional appliance)、顎整形外科的装置(orthopaedic
appliance)の、有用性が、検証された。
C. 現在、非抜歯治療の根幹となる理論は、この当時より検証されてきた、functional applianceの実験結果に基づくものである(この時点以前にも、研究は、されていたが、側方頭部X線規格写真という、比較検討に有用な計測手法が、持ち入れられてから、科学的データとして、検証されるようになった)。
この前提となる理論は、functional matrix 理論と言われ、機能的な要因が、形態の構成要素の変化を取り仕切る、という物である。 これを基にし、機能的な要因を変化させれば、形態は、変化するという考えで、functional
applianceの研究が、行われ、現在も続いている。
このfunctional matrix 理論は、ほぼ100%学術的に認められている物で、反論は、出ないであろう。 形態を変えるという点で、
学術的に、これに対抗できるのは、遺伝子操作による、形態そのものの操作であるが、functional matrix 理論の正当性を否定する物では無い。
この論理に基づいて、顎の側方拡大、前方拡大を、行うのが、非抜歯治療の根源である。
しかしながら、現在の矯正歯科治療の技術では、外科的処置(手術)を除き、顎顔面の全体的な構造を、変えることは、技術的に出来ません。
部分的な、変化は、可能です。
その為、顎が小さいなら顎だけを大きくする、という治療になります。極言すると、顎だけ大きくすると、顎が、前方に出、猿のような顔つきになります。
非抜歯を、前提としている矯正歯科医院では、それが、日本人固有の人種的特質で、極平均的な物だと説明されるでしょう。 あるいは、ethetic line(鼻の先と、下顎の先端を定規などの直線状の物で結び、それより唇が出ていると、横顔のバランスが、崩れている
)という判定基準で、鼻が低いから、鼻を整形外科で高くしなさい、下顎の成長度が低いから、下顎を整形外科で高くしなさいと、いわれるでしょう。 しかしながら、口元が、とんがっているという、根本的な問題を解決した訳では無く、ちょっと見では、整っているように見えても、よく見ると、唇が、とんがっているのは、そのままです。
D.将来の歯科矯正治療の展望
顎が、小さくなって行く傾向が、今後も続くのであれば、遺伝子操作により、歯の数を少なくする。
顎が、小さいなら、遺伝子操作により、顎を大きくしていく。
という、二方法が考えられます。しかしながら、人類の進化の過程では、顎は、小さくなってきています。また、それが、標準となっています。 遺伝子療法を利用すれば、過去の形態に戻ることは、可能ですが(顎を大きくするという点で)、はたしてそれが、その時点での、顔の標準に合致すると言えるでしょうか。
この遺伝子操作に関しては、将来の矯正歯科治療の根源をなすものと思いますが、研究室段階では、遺伝子操作理論自体理解出来ずに、歯学部では、そこまで出来ないという、教室が多々あります。 しかしながら、、人遺伝子情報が、解明されつつある現在、その解明は、単に遺伝情報のパターン・マッチング解析で、得られるものです。 早期に、そのような、学術的論拠に基づいた、治療法を、確立したいと、一研究者として、思っています。
Informed Concent(医者からの適正な説明とそれに基づく同意)、Ebidence Based Medicine(医者の正確な診断資料に基づく適正な治療への同意)などと、言われていますが、これは、医療事故訴訟の特に多いアメリカでの、医者の医療過誤訴訟を逃げる手立てによる要望から、提起されたものです(要するに、危険は、これだけありますが、了承しますか、了承した以上、ここに記した危険の発生は、有り得ると、認めてもらった上で、処置を行います、という契約です
-- 契約上認めた危険性は、実際に生じたとしても、明らかな医療過誤を除き、異議は、認められません)。
本来は、疑問な点は、とことん医師に説明を求め、回答を得、医者側も、考えうる、治療術式と、その治療結果を、出来る限り説明するというのが、趣旨だったのですが。
矯正歯科治療を受けるにあたって、とことん気のすむまで、御相談・御質問されることを、お勧めいたします。