歯を抜く矯正歯科治療と、歯を抜かない矯正歯科治療

 歯並びが悪いから、矯正歯科治療を受けようと思う人は、出来れば今有る歯を全部残して、治療したいと思われるのは、当然の事と思いますし、治療上(治療する側から判断して)、可能な人も在るのは、確かです。
 以下の、解説は、出来る限り、公平に、歯を抜く矯正治療と、歯を抜かない矯正治療を、比較したつもりですが、私自身、早期治療(6〜8歳頃から)を、行えば、ほとんど全ての症例を、歯を抜かずに治療する事は、技術的には、可能ですが、個々の顔のバランスを考慮すると、歯を抜く治療の方が多くなる、という見解であることを、初めに申し添えておきます。

 歯を抜く、抜かないという治療を、単純に比較する為、

 Class I crowding (Skeletal Class I)、すなわち、上下顎骨の、前後的な釣り合いが取れており(出っ歯、受け口等、骨格的な問題点は無く)、問題点は、単に歯並びだけが、がたがたしている。

 早期治療(6〜8歳頃から)が、可能。

 という、前提で、解説していきます。


1.何故歯並びががたがたしているのか
  非常に単純な答えです。
  歯が顎の骨に乗り切らないからです。

2.歯が顎の骨に乗りきれないのなら、どうすればよいのか
  a. 器(顎の骨)が小さいから、全ての歯を乗せるのは、不可能→歯を抜く治療
  b. 器(顎の骨)が小さいのなら、器を大きくする→歯を抜かない治療

  すなわち、
  歯が、土台に乗り切らない大きさなら、

  a. 土台の大きさは変えずに、上に乗る歯の数を少なくする。
  b. 土台の大きさを、大きくし、全ての歯を残す。

  これが、歯を抜く治療と、歯を抜かない治療の、最大の相違点です。


 ここまで、御理解下さいましたら、たいていの人は、土台を大きくすることが可能なら、土台を大きくして、歯を抜かずに治療すればいいと、思われた事と思います。

 では、ここで、

<絶対、歯を抜かない、という治療法を考えると>

 どのように土台を大きくするのでしょうか、

 顎を前後的に大きくする→顎を、前に伸ばす
 顎を横方向に拡大する→顎の横幅を大きくする

 大別すると、この二法しか有りません。
  (歯が大きいなら、歯を削って小さくする、という方法もありますが)

 これらは、先に述べましたように、技術的に可能です
しかしながら、顔つきの全体的なバランスを考慮すると、

 顎を前後的に大きくする→前に伸ばす→口元(唇)が、顎を前に伸ばせば伸ばすだけ、とんがってきます。
 顎を横方向に拡大する→横幅を大きくする→拡大すれば拡大するだけ、エラのはった、顔付きになります。


 では、歯を抜いて、治療する場合、以上の不都合は、解消されるのでしょうか、
 
<絶対、歯を抜く、という治療法を考えると>
 
  歯を抜くと、一般的に、前歯が後ろに移動します→闇雲に歯を抜くと、前歯が、後退しすぎて、唇が引っ込みすぎる事が有ります。


 以上の点より、本来矯正歯科治療において、初めから(患者さんの状態を診ずもせず、矯正歯科医院の方針として)

 歯を抜かない治療が出来ます。
 歯を抜かないと、治療できません。

 などという、治療方針は、示せないものです。

 歯と、顎の大きさのバランス、顔貌のバランスを考慮した上で、歯を、抜かずに治療した方が良いCaseも有り、歯を抜いて治療した方が良いCaseも有る、というのが、専門医としての立場です。


 矯正歯科治療では、歯並びの改善は、当然求められ、達成しなければならない最低限の治療目標です。 
 専門医としては、その最低限の治療を行い、なおかつ、顔貌(顔つき)を考慮した治療を行うことが、必要だと思います〔歯並びは、確かに治ったけれど顔貌(顔つき)が変だ、変になったという治療を求められますか〕。
 矯正歯科治療では、一般に、あまり強調しませんが、顔貌(顔つき)も、大きく変化することに、御留意願います。

専門医としての、学術的的見解--抜歯・非抜歯に関する、学術的論点に,
                                              興味のある方は、ご覧下さい。

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